私と久留米かすりの物語
KOMINKAN JAPAN Special Issue

私と久留米かすりの物語

私にとってかすりは、ひぃばあちゃんと過ごした記憶が蘇ってくるものです。

母の実家は代々、田舎で農業を営んでいます。そこに住むひぃばあちゃんは、私が幼い時によく面倒を見てくれていました。遊びに行っては家の前の小さな畑とハウスで野菜を取ったり、縁側で折り紙やお手玉をしたり。季節によっていろんなことを教わり、ひぃばあちゃんのすることを見よう見まねでやって、ゆったりした時間を過ごしていました。私はその時間がとても好きで、「今日はなにをするのだろう」といつもわくわく。田舎ならではの過ごし方や遊びが楽しくてたまりませんでした。そんな大好きなひぃばあちゃんが履いていたのが、「久留米かすりのもんぺ」でした。


ひぃばあちゃんとの楽しい記憶の端々には今もあのかすりの色と模様がしっかりと刻まれています。

そんな思い出があったので、就職しておしゃれなファッションアイテムの中に久留米かすりのもんぺが堂々と陳列されている様子にはかなり衝撃を受けました。「かすりのもんぺってひぃばあちゃんが履いていた年配のアイテムやん!」「おしゃれなアパレルの店になんで置いてあるの?」と。


でも、ずらっと並んだ人気の久留米かすりの商品を見てみると、自分が今まで知っていたかすりとずいぶん違うのです。

かすりならではのかすれた柔らかい印象の柄で表現されたドットやストライプ。それに明るいトーンから暗いトーンまで幅広くあるカラー。

私の久留米かすりに対するイメージが大きく変わった瞬間でした。

「久留米かすり」とだけ聞くと、年配の服というイメージがあって、自分が着るにはハードルが高いと感じていたのに、すごくおしゃれでかわいいとさえ思うほど。ショップに立つ先輩たちも日頃から愛用していて、その肌触りの心地よさに私もすぐに虜になってしまいました。


それからというもの久留米かすりの魅力の沼にどんどんハマり続けています。今回はストールやハンカチ、あづま袋にふろしきと、身近においていつでも使えるアイテムを扱えることになったので、ファンの一人としてとても喜んでいます。

久留米かすりは毎日使ってどんどん洗ってもへこたれないほど生地が丈夫。いい風合いを出しながら柔らかくなっていくので肌触りもよく、困ったときはコレ!の頼れるアイテムになってくれます。

柄の柔らかな印象とカラー展開の多さも魅力で、ちょっとお洋服で冒険したいときにも、ちょい足しするだけでがらりと印象を変えてくれるので、いくつもそろえたくなっちゃいます。


大人になって再会した久留米かすりは、新しい時代にフィットしたおしゃれなアイテムになっていました。

けれど、伝統の織り方で手間ひまかけて作られた久留米かすりの美しさ、心地よさ、丈夫さは変わりません。気軽に使えて、ストレスを感じさせない生地の魅力は永遠です。

私がショップに立つ日、おでかけの日に、真っ先に手が伸びるのは久留米かすりのアイテム。ひぃばあちゃんも、同じだったのかもしれません。ひ孫の私が訪ねる日の朝には、思いっきり遊べるようにとかすりのもんぺを選んでくれていたのかもしれません。

これまでも、これからも。良いものは世代を超えてつながれていく。その良さを、このショップでしっかりお伝えしていきたいと思っています。

 

 YOKKA 久留米絣の商品についてはこちらから↓

 

この記事を書いた人
坪井 詩奈