接客の経験を全部詰め込んで
坪井 オリジナルのブラックフォーマルづくり。メーカーの侶丹さんとどのように進めていかれたのですか?
犬塚 侶丹さんがお持ちの型の中から、まずブラックフォーマルにふさわしく人気の高い十数型にしぼって、全部試着させてもらうところから始めました。お祝い向きのドレスもあったので、どうやったらより喪の場面にもふさわしくなるか、さらに着心地をアップできるか、という感じであれこれ相談・試行錯誤しながら調整をかけていきました。
犬塚 パパママの実店舗での接客やバイイングの経験から、お客様の求めているものはどんなものか、という視点を大切にしましたね。無理なくいろんな体型の方に合うものを提供したいという点も重視しました。普通の服よりは長く着るものだから、妊娠も含めた体型の変化にも対応できるように考慮して、最終的に5つの型にしぼり、2つのジャケットを準備しました。
坪井 実店舗の接客の経験、お客様の声が大いに反映されているんですね。5つの型にしぼった中には、今回パンツタイプのセットアップも加わりました。普段パンツ派なのですごくうれしかったです。
パンツスタイルの喪服も提案
犬塚 よかった。レディースのブラックフォーマルというと、本来ワンピースかツーピースでスカートが一般的だったと思います。でもこの多様化の時代、おしゃれなパンツタイプがもっと広まってもいいよなと。常識にとらわれすぎずに歩んできたパパママらしさも少しプラスできたかなと思います。
山口 私も普段からスカートはあまり選ばないから、パンツがあるといいなと思って。故人を偲ぶ場面で、普段とは違う服装だから動きにくいとか、自分らしくいられないというのはちょっと違うのかなと思います。 それに男女平等と言われて久しいけど、まだまだお葬式なんかでは女性が忙しく動くことって多い。そんな時もパンツだと抜群に動きやすいですよね。
調整のポイント
坪井 調整後のお打ち合わせは私も同行して、試着させていただきましたが、鏡を見た瞬間思わず「きれい」とつぶやいてしまいました。具体的に調整のポイントはどういったところだったんでしょうか?
山口 幅広い世代に合うデザインになるようにカフス部分のボタンの大きさや個数などを変更したり、動きやすさとシルエットの両立を目指して、脇の部分から袖口にかけてのカーブを詰めたり広げたりと見直しました。胸元の開き方とか素材の透け感も、着る人の年代や着る場面を想定して塩梅を細かく調整しました。
犬塚 お葬式とか法事の時って、意外と他の人の服装に目が行きがちです。そんな時、自分の思うおしゃれや自分らしい服装が、他の世代に必ずしも違和感なく受け入れられるかはわからないですよね。特に地方に行くほどその許容範囲が厳しかったりする。だから目立つおしゃれではなく、できるだけ落ち着いた雰囲気、洗練された感じや、さりげないおしゃれを重視しました。
坪井 着る場面まで細かく想像して、たくさんの配慮が散りばめられているんですね。 なかでもお二人の「特にここはこだわってるよ」という部分をお聞きしたいです。
犬塚 「着心地以上の動きやすさを」というねらいで、アームホールの調整を細かく行ったことです。シルエットの美しさと動きやすさが両立できるように。それから、足が長く見えるように前後のウエストのタック位置も調整して、下半身の丈感を長めに取りました。
山口 ジャケットの微妙な丈感もですね。今回作ったすべてのワンピースに合わせられるように、バランスを吟味しました。動いてもきれいに見えて、せっかくの美しいワンピースのシルエットをかき消さないように。長すぎると野暮ったくなるし、短すぎると幼い感じが出るし、結構難しかったですね。
それぞれのアイテムの特徴については、各商品ページでの中でご説明していますので、ぜひご覧ください。スタッフたちのこだわりを踏まえて見ていただけると、よりステキさが伝わると思います。
次回は完成したブラックフォーマルへの思いと、喪服だけじゃないブラックフォーマルの楽しみ方についてお話を聞いていきます。
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