ちょうどいい価格帯
坪井 今回のオリジナルブラックフォーマルには、いろんな思いやこだわりが詰まっていることがわかりました。価格についても2〜3万円台、ジャケットと合わせて買っても4万円台というのがうれしいです。
犬塚 価格も手の届きやすい範囲にという思いがありました。普通のお洋服より長く着るものだから、体型の変化も大いにありえます。できるだけゆとりを持たせて作ってはいますが、買い替えも考慮したらそんなに高いものは選べないですよね。これまで気に入ったものが見つけられなかった人に選ばれる、サイズアウトして買い替えになった時もまたこのショップで買おうと思ってもらえる、そんな一着になれればと思っています。
山口 とはいえ、簡単に手が出る値段ではないですよね。だからこそお葬式や法事などの弔事にはもちろん、結婚式や入学式などの慶事にも、そしてデイリーにも満足いくまで好きなだけ着て、着倒してもらいたいです。アクセサリーやヘアスタイル、バッグやシューズの合わせ方で、何通りにもコーディネートを楽しんでもらえます。クローゼットの手前の方にかけて頻繁に着てもらえたらうれしいです。
デイリーにもオケージョンにも
坪井 シンプルだけど、ディテールにこだわりが感じられるから1枚でもおしゃれに着られますし、さまになりますよね。アクセひとつで華やかにできるし、ブーツを合わせるとカジュアルでかっこよくもできるなと妄想が広がりますね。
山口 日頃から着れるものだと、愛着が湧いて「自分らしい」一着になっていきますよね。 そのいつもの自分らしい装いで悲しみの場面に向き合えるって、いいことだなと思います。特別な日にしか着ないぎこちない服よりも、自分の体にも心にも寄り添ってくれる気がする。 そういった意味でも、今回のブラックフォーマルは納得して事前に準備してもらえる仕上がりになったと思います。
前もって準備したくなるブラックフォーマル
犬塚 そう、今回目指したのはまさに「前もって準備したくなるブラックフォーマル」なんですよね。 フォーマルって本来、故人や遺族、参列者に礼を尽くすためのファッションだけど、「失礼に当たらないように」、というどこか後ろ向きな選び方になりがちだったと思います。だから自分のスタイルとは違う喪服でもしょうがなく買って、その場を失礼のないようにしのぐ、みたいな。
山口 今回ブラックフォーマル作りを通して、生きること・死ぬことについて、深く掘り下げて考える機会になりましたよね。別れはすごく悲しいんだけど、暗くなればいいというものでもない。ある意味、お葬式はここまで精一杯生きてきたことの証だし、人生の卒業式・はなむけの日でもある。だから、自分の体にも心にも寄り添ってくれる喪服を着て、凛として見送るというマインドもあっていいんじゃないかなと思いました。
坪井 事前に準備したくなる喪服があることで、死に対する向き合い方まで変わるかもしれないなんて。服って奥が深いですね。普段は聞けないお話しが聞けてすごく興味深かったです。お二人とも、ありがとうございました。
連載はこれで一旦おしまいです。最後まで読んでいただきありがとうございました。
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