バイイングを担当する犬塚さんことわんちゃん(男性)に聞いた、レディースを買い付ける難しさとは?
ちょっと突っ込んだ後編です。(聞き手:KOMINKAN JAPAN スタッフ)
前編はこちら
のぞいてみたい! バイヤーの世界 【前編】
「かわいい」を理解するのは難しい!
—接客は先輩に教わったり先輩の姿から学んでいますが、そもそもバイイングは教えてもらうものなのでしょうか? 犬塚さんのケースを教えてください。
犬塚 そうですね...ネット等を見れば大枠の事は載っていますので、まずは自分で勉強しました。行き詰まった時は先輩や仲間に教えてもらったり、相談したりしました。販売のキャリアを積み重ねながら、自分の感覚を磨く感じです。
—行き詰まったのはどんな時だったのですか?
犬塚 正直、女性独特の「かわいい」が良くわかりません。
これかわいいよね?って言われても「そうかな~」と疑問に思ったりすることもあります。
かわいいの指すものの幅が広すぎて難しいです。ちょっと変なキャラクターを見てもかわいい!ってなるし、シュッとしたかっこいいスタイルの服も、甘い系の服も、どちらも「かわいい」と表現されることがあります。「ええっ、それもかわいいってことになるの!?」と驚くこともあります。
—確かに「かわいい」っていろんなものに対して使ってしまいます。説明が難しいです。
犬塚 自分なりに、その感覚の違いについて考えてみたんです。個人的な見解ですが、男性のものは女性ほどバリエーションがありません。例えば、お洋服のジャンルで言えば、ドルマンスリーブやフレアといった形は、基本的に女性のもの。男性は形のバリエーションがそもそも少ないですよね。親しんでいる心ときめくものの絶対数の多さが、女性特有の「かわいいに反応する感性」を育んでいるのではないかと思います。
身近なところでは、娘がプリンセスのドレスに対してかわいいと言ったり、ドレスを欲しいと言った時に「もうかわいいを理解しているのだなぁ」と思いました。自分は、だったら洋服を買った方がいいのにと思ってしまうんです。
仕事として理解しようと頑張ってはいるものの、正直自信はありません。なので、それが男性でいう戦隊モノの変身ベルトなのかなと思うようにしています。あのベルトの真ん中が回るのを僕らはかっこいい!と感じていたように、女性のかわいいも存在するのだと。
—そうなんですね。でも、他にもレディースを担当する男性バイヤーさんはおられますよね。
犬塚 はい。決して少なくはないと思います。ちなみにレディースブランドでも、メーカーの営業はほとんど男性です。おじさん対おじさんで女性のお洋服の商談を行っていることを時々不思議に思います。
—そうなんですね! なんだか意外です。アパレルって結構男性社会なんでしょうか?
犬塚 いえ、決して女性が少ないわけではありません。ただ、バイイングの現場は展示会なので、特に男性が多いのだと思います。なぜなら、アパレルの営業さんは体力勝負!大きなキャリーケースを持って各会場を渡り歩いて商談されています。そのこと自体がパワーも体力も使います。たくさんの荷物を運び、車の運転もバリバリこなすことが求められるので男性が多いのかと思います。
—確かに! 華やかなイメージばかりでしたが、洋服を詰め込んだ荷物の重たさ、棚卸しで味わっていますので、展示会となればもっと大変ですよね。
KOMINKAN JAPANのバイヤーとしてのこだわり。
—KOMINKAN JAPANのラインナップは、オリジナル商品と、メーカーの製品のセレクトの両方があります。どのようなものを意識的にバイイングされていますか?
犬塚 品揃え的には、商品そのものがものすごく新しい物だったり、トレンド感がある商品ではないです。
でも、組み合わせや、提案の仕方によって新しさが出ていたり、贅沢感を味わえたりしますので、そうした商品をバイイングしています。長く使えて、質の良いもの。メーカーのこだわりが詰まっていることは全アイテムに共通しています。
—オリジナルブラックフォーマル「SUMIZUMI」の企画開発も担当されているんですよね。バイイングで培った視点はどのように生かされていますか?
犬塚 バイイングの際に最も大事にしている「着心地」はSUMIZUMIの開発でもこだわりました。長く愛用してもらえるか、アクセサリー、バック、靴などで変化を加えれるか。いろいろ着れるブラックフォーマルにしたくて、色々なシーンを想像しながらディテールを詰めました。動きやすくて着やすい、とてもラインがきれいなブラックフォーマルが完成しました。
—SUMIZUMIみたいなKOMINKAN JAPANオリジナルの商品が増えるといいなと思います。
犬塚 バイイングの経験や、売り場でのお客様の声を反映した商品開発をしていきましょう。
(終)