伝統工芸・長崎ハタに魅了された人【後編】
KOMINKAN JAPAN Special Issue

伝統工芸・長崎ハタに魅了された人【後編】

ハタに魅了され、ハタ作りをしている大守屋の主人・大久保学さんにインタビュー。
前編では、デザインについてお聞きしました。後編では製作について教えていただきます。

前編はこちら
伝統工芸・長崎ハタに魅了された人【前編】



松尾
材料の和紙や竹についてはどのようなものを使われているのですか?

大久保
和紙は基本的に、一枚一枚職人さんが昔ながらの手漉き(てすき)で作られるものを使用しています。
同じ一枚の和紙でも、原料である植物・楮(こうぞ)の量が場所によって少しずつ違ってくるので、表面に少し凹凸があるのが特徴です。機械で作った紙のようにつるんとした均一な表面にはなりません。でも、それが手漉きならではの柔らかくて温かい印象になって、味わいとして楽しんで頂けるかなと思います。



松尾
和紙特有の繊維が透けて見えている質感、いいですよね。
和紙の色は元々からついているのですか?

大久保
白い手漉き和紙を染めてそれぞれ赤・青・黒と色を付けているんですよ。仲良くしてもらってる他のハタ屋さんに染めてもらっています。

松尾
白地に色を塗って描くわけではなく、わざわざ染めた紙を切って貼り合わせて作られているんですね。

表も裏も美しく、手仕事の証

大久保
そうですね。この作り方も長崎ハタの特徴の一つです。
長いハタの歴史の中で、おそらく軽量化のために紙の重なりを最小限にしようと、生まれた工夫なんじゃないかなと思います。ハタをよく知っている人は、綺麗にはぎ合わせられているかどうか、必ず裏を確認されますよ。



松尾
紙が重なるのりしろを最小限にすることで、より美しく、より自由に風に舞うハタになるんですね。

大久保
今回販売していただいている「かげ碁盤」の柄は、実はハタの柄の中でも一番というくらい作るのが難しくて、通常の3倍くらい手間がかかるんです。



松尾
そうだったんですね!どのようなところが大変なのでしょうか?

大久保
表から見ても裏から見ても、青の線が綺麗に交差して、白の部分も等間隔になるように作っています。
交差する部分が多い絵柄ほど切り貼りする工程が多くなり、技術力を要するのですがこの柄は交差だらけ。
工程が増えるほど、糊(のり)と和紙に触れる回数が増えるため、どうしても紙の繊維が毛羽立ったり、他の部分で出た繊維が付着することもあります。最も慎重な作業が必要な柄ですね。



松尾
それを聞いてから見ると、さらに愛着がわいてきました。
紙の繊維が見えるのは、それだけ手間ひまがかかった職人さんの手仕事の証のようなものですね。
骨組みとなる竹ひごも手作りとお聞きしたのですが。

竹も自分で!

大久保
そうです。自分で竹を切り出してくるところから始まります。作るハタのサイズによって必要な竹ひごの長さは異なります。節と節の間が求めている長さに足りているか、固さはどうかなど見ながら山を歩き、ちょうどいい竹を切ってくるんです。



松尾
そんなところからご自分でされているなんて、驚きました。本当に昔ながらの作り方のようですね。

大久保
そうですね。その後は火であぶったり、天日干ししたりしながら竹の油抜きをして、しなり具合が左右均等になるように少しずつ削って微調節していきます。実際にハタの骨組みとして使える状態になるまでには、2〜3年もの時間がかかるんですよ。
私自身はハタ揚げの時に手ごたえがある方が好きなので、しなり具合がやや硬くなるように仕上げています。



松尾
竹ひごだけで2~3年!想像以上の手間と時間がかかっているんですね。
てっぺんの竹ひごがフックのように曲がっていますが、これはオリジナルですか?

大久保
それも長崎ハタの共通の特徴です。私はハンダゴテでぐいっと曲げていますよ。これがあるので、インテリアとしても飾りやすいですよね。
いろいろお話しましたが、長崎ハタは揚げてなんぼ。だから、インテリア用でもハタ揚げ用でも、作るときは空に上がったときのことを考えずにはいられませんね。
ハタ揚げが大好きだからこそわかる感覚やこだわりをハタ作りの技術にもっともっと活かしていけたらと思います。

松尾
ハタ揚げの大ファンが自らこだわりぬいて作るハタ、全国の皆さんにお届けできるよう私たちも頑張りますね。
長崎観光の際は、ぜひお店に足を運んでいただいて定番柄からオリジナルまで、見ていただきたいです。
大久保さん、ありがとうございました。


大守屋の店舗・カウンター奥では製作風景が見られることも。


途方もない手間ひまがかけられた、ハタ好き自ら作るこだわりのハタは、インテリアのアクセントにぴったり。
ぜひお家に飾って、長崎を感じてみて下さい。




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この記事を書いた人

坪井(KOMINKAN JAPAN編集部)